徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

赤い月のロゼ 第4回 黒き吸血鬼

月に照らされる帝都を、2つの影が走っていた。 先を走る紫紺の外套をはためかせる影――ロゼは、目をカッと見開いたまま機敏にあたりを見回し、吸血鬼の姿を探す。女性のものとは思えない俊足についていく2つ目の影――アルフォンスもまた、ロゼに倣って辺りを…

赤い月のロゼ 第3回 嫌な予感

翌朝、アルフォンスは部隊の隊長ガラードの執務室にいた。『吸血鬼事件』を個人的に調査するための許可をとりに来たのだ。 ガラード隊長は頭をポリポリと搔きながら、その歳の割りには精悍な顔で息子のような存在でもあるアルフォンスを怪訝に眺めている。 …

赤い月のロゼ 第2回 吸血鬼を狩る者

一瞬見えたのは幾何学的な模様だった。 ブーツの靴底だ。それが、アルフォンスの目の前を通過した。 それは、強烈な破壊音と共に、牙を剥く女性を吹き飛ばした。突然目の前の景色が夜空に切り替わり、体の束縛が解かれた。押しつぶされる寸前だった喉に空気…

赤い月のロゼ 第1回 赤い月

歴史はおおよそ200年ほどの昔、中世の時代に遡る。 西ゼムリアの大国・エレボニア帝国で《獅子戦役》が終結し、その立役者であるドライケルス帝が没してから十数年の月日が流れたその時代。 帝都ヘイムダル。緋色のレンガを基調とした建物が建ち並び、《緋の…

カーネリア 最終回 《帝 国 時 報》《インペリアル・クロニクル》・Ⅱ

白い世界に飲み込まれた僕は、固い地面の上へと吐 き出され、転げ落ちた。 陽の匂いのする温かな大地。天国の床は、まるで敷石のような手触りだ。手で周囲を探ると、ごわついた髪の毛が触れた。シスターも僕と一緒に「女神行き」になったらしい。腹の底から…

マルセル・ニールセンについての考察(?)

たまには……ということで、タイトル通りのお話をば。 空の軌跡the thirdから登場するニールセン。巷では使徒第一柱など噂されている彼ですが、果たして本当にそうでしょうか? ニールセンについて判明している情報 ・盲目である 1192年の百日戦役において…

カーネリア 第10回 発動

対岸めがけ、シスターは黒い水煙を引いて飛ぶように駆けていった。たちまち僕は引き離される。 水門の方から魔法がひらめき、立て続けに空を切り裂くが、どれもシスターには届かない。水路に沈殿した汚物を吹き飛ばし、僕の体に爆風となって襲いかかってくる…

カーネリア 第9回 カーネリア

切れかけた導力灯の明滅が、汚水の波面に細い光を走らせていた。その前を、風音を残してシスターが駆け抜ける。足先から彼方の闇へ、斜めに遠ざかっていく彼女の影を追い、僕は息を切らして足を動かし続ける。 七耀教会の聖堂めざし、僕とシスターは休むこと…

カーネリア 第8回 帝都の腸

紳士たちの背に隠れるようにして、僕らは座席の間を進んだ。 膝の横に当たるたび、僕はバッグの存在を強烈に意識してしまう。まるで意図せずに誰かの体に触れてしまったような感じだった。その安っぽい布の手さげの中に、《猟兵団》が血眼になって追いかける…

カーネリア 第7回 女神行き

隙間風のような音を鳴らして、僕は息を吸い込む。導力器を握ったままの手で、首に食い込むシーツをほどいた。横を向くと、口から唾液が溢れた。どん、と背後で何かが動く気配。《猟兵団》の女が、まるでバネ仕掛けの人形みたいに跳ね起きる。腹に1発魔法を…

カーネリア 第6回 仕組みの確認

テーブルの上には、僕の導力器と、空にされたバッグと、あの古紙の包みが並べてある。遊撃士は僕の顔と卓上の小物とを、まるで見比べるように交互に眺めていた。いかつい皮手甲をはめた右手を見せ付けるように、しきりとあごをなでる。 僕が連行された先は、…

カーネリア 第5回 安息の使者

冷めたパンケーキの上にたたずむバターを、僕はじっと眺めていた。フォークを取り上げて、突っつき、裏返し、なすりつける。そうしているうちに、ますます皿の上の物への興味が失せてくる。僕の頭上でランプがじじっと音を立て、蜂蜜色の光をゆらめかせた。 …

カーネリア 第4回 肉の弾

シスター・カーネリアは僕の右手全体に激痛を与えたまま、やさしく語りかけてきた。 「大人しくしていてくれるわよね、トビー」 僕は涙目どころか本気で涙を流しながら首を縦に振った。瞬間、手首の角度はゆるまって、痛みは幻のように溶けて消えた。 「誤解…

カーネリア 第3回 シスター

列車は霧の中を飛ぶように走っていた。窓ガラスに吹き寄せられた水滴が透明なすじになって、いつまでも同じところで身をくねらせ続けている。 車窓に額をくっつけたまま、指で2枚のチケットをこすり合わせた。帝都から鉄道ではるか南部の国境の都市へ、王国…

カーネリア 第2回 駆動

「よう、トビー。いい時に来たな」 僕にそう声をかけると、ミヒュトはカウンターの中でもぞもぞと身じろぎした。食べていた焼き菓子を膝の上に置き、粉砂糖まみれの両手をぱんぱんと叩く。薄暗い店内に、甘い香料と焼きリンゴの匂いが広がった。 「ちょうど…

闇医者グレン 最終話 グレン

1ヶ月後ーー エメリア病院の小児病棟の個室で、バイオリンを弾くヒューゴの姿があった。 彼の両手は同じ年代の子供と同様の、柔らかく暖かな肌色を取り戻していた。もう、翠色の妖しい輝きは微塵も残っていない。 しかし、結晶化していた指先の感覚はまだ鈍…

闇医者グレン 第13回 祈り

「……おい、どうした?」 たまらずルーファスは声をかけた。 「グレン先生……?」 シェリーもその様子を心配そうに見つめている。他の医師たちにも、何が起こったのか理解できない。 グレンは、脈打つ心臓を視界に捉えた瞬間―― カタリナの手術を思い出していた…

闇医者グレン 第12回 手術

ルーファスはすぐに、病院内にある会議室に3日後のヒューゴの手術に臨む医師たちを集めた。 名目は、より効果の高い術式への変更。 グレンは術式の発案者として紹介された。 医師たちは当初、それを冷ややかに受け入れた。下町で闇医者を営む男、グレン…… 腕…

闇医者グレン 第11回 覚悟

「……ヒューゴ君、考え直したほうがいい。」 すぐさま反論したのは、そばにいたルーファスだ。彼は、グレンを強く睨みつけた。 「『腕を失わずに治せる方法』とは…… カタリナに施した術式だな?あれが失敗だったことを誰より分かっているのはお前のはずだ。」…

闇医者グレン 第10回 希望

ヒューゴの手術が3日後に迫った日の夕方。 手術の期日が決まってから、彼の病室には毎日のように担当医のルーファスがやってきていた。来たる手術について、少年に説明するためだ。 「……ヒューゴ君、聞いているかね。」 ルーファスが神経質そうな声で尋ねる…

闇医者グレン 第9回 シェリー

「お前が……カタリナの妹だと!?」 驚愕するグレンにシェリーはコクリとうなずく。その眼は真っ直ぐにグレンを捉え、とても嘘を言っているようには見えない。 カタリナと歳の離れた妹、シェリル。 何度か会ったこともある。 カタリナの入院時にはよく見舞い…

闇医者グレン 第8回 苛立ち

グレンは下町の診療所に戻ってきていた。 中の様子は、出て行った時のままだ。 ……改めて見ると、散らかっている。 大金の入ったケースですら粗雑に置かれる始末。 築40年の古い建物とはいえ、まめに手入れしていれば少しはマシだったろう。 だが、彼にはそう…

闇医者グレン 第7回 衝突

手術の期日を告げたルーファスに、シェリーは慌てて反論する。 「ま、待ってください、ルーファス先生! いくらなんでも急すぎます!」 「《結晶病》の症状は待ってはくれない。 手術するなら早いほうがいい。」 屋上からの景色を眺めたままのグレンはそれに…

闇医者グレン 第6回 カタリナ

10年前、グレンはルーファスと共にレミフェリア公国内のある病院に勤めていた。 手術の才に恵まれた2人は、若手医師の中でも期待の星だった。 ある日2人は、接待で連れていかれた小劇場で、公国に伝わる伝統舞踊『バレエ』を見て、舞台の上の一人の踊り手に…

闇医者グレン 第5回 ルーファス

「――無理だ、その男には。」 病室前の静かな廊下に、男が現れていた。スラリとした細身の長身に白衣を羽織り、銀縁の眼鏡の奥から鋭い眼差しを向けている。 「先生……!」 看護師であるシェリーはよく知っていた。 彼はこのエメリア総合病院の医師の1人だ。 …

闇医者グレン 第4回 結晶病

それはよく観察すると、あまりにも生々しい“人間の手”を形作っているのがわかる。まるで精巧な美術品のようだった。 だが、どんなに老練した彫刻家といえど、ここまでの息づきを感じられる作品を作ることはできないだろう。 なぜなら、この美しい翠耀石(エス…

闇医者グレン 第3回 患者

いつの間にか雨は上がり、あたりは湿った空気に包まれていた。 「こんな物が出来ていたのか……」 エメリア総合病院――昨年建造された病棟は 真新しくも威厳を感じさせる立派な建物だった。 さすが、大公家が出資したというだけのことはある。 「グレン先生、こ…

闇医者グレン 第2回 依頼

「グレン先生はいらっしゃいますか?」 診療所に現れた看護師が尋ねる。 活舌のいい喋り方が凛とした雰囲気を感じさせた。 年齢は20代前半といった所だろうか。 まだ幼さが残る顔つきだが、かなりの美人だ。 「ああ、そりゃ俺のことだ。」 グレンはひとま…

陽溜りのアニエス

碧の軌跡より、陽溜りのアニエス一気読み。しかし、「魔法使い」は結局何なんでしょうね。至宝の一族だと魔女と被るし、舞台共和国だし。ルシオラさんが「共感できる」って言ったのは身の振り方とかだろうしなあ。 陽溜りのアニエス 第1回 クリーム色の少女 …

陽溜りのアニエス 最終回 陽溜りのアニエス

エドウィン・アーノルドがその少女に勝てたことは一度としてなかった。少なくとも覚えている限りは一度もだ。腕っ節には自信があったし、これでもそこそこ頭も切れる……つもりなのだが、出会った瞬間から今日まで、ぐぅの音も出ないほど負け続けている。 そう…