徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

闇医者グレン 第11回 覚悟

「……ヒューゴ君、考え直したほうがいい。」

すぐさま反論したのは、そばにいたルーファスだ。彼は、グレンを強く睨みつけた。

「『腕を失わずに治せる方法』とは…… カタリナに施した術式だな?あれが失敗だったことを誰より分かっているのはお前のはずだ。」

怒気が孕むその声に、ヒューゴは怯んでしまう。

グレンは黙ったまま、おもむろに分厚いファイルを取り出した。

「……こいつは俺が闇医者になってから10年かけて研究してきたものだ。」

そう言ってルーファスにファイルを投げ渡す。

彼は重量感のあるそれを受け取って驚愕した。

そこには、《結晶病》に関する、膨大な研究データが記されていたのだった。

患者のカルテ、症例、行われた処置の報告書…… 明らかに違法な手段で入手したと分かるものもある。

そして最後の頁には……

ルーファスの知るものとは違う、《結晶病》の新しい術式が載っていた。

「あの時、カタリナの手術をして……そのおかげで出来たものだ。」

グレンは多くを語らなかったが、闇医者として道を外れながらも、長い間《結晶病》と戦い続けていたのは明白だった。

闇医者として多くを患者を扱い、数々の手術を行ったことで完成に至ったのだ。

『私の愛するグレンなら、きっとやってくれるーー』

姉の言葉が間違いではなかった事を知り、不意にシェリーの瞳から涙がこぼれた。

「……確かに、この術式なら患者の命を守れる可能性は高いだろう。」

一通りファイルを読んだルーファスは、グレンの術式に手応えを感じていた。

その言葉に、ヒューゴも喜びの表情を見せる。

「それでも、私はお前に患者を渡すわけにはいかない。」

「ど、どうしてですか!?」

シェリーが困惑してその意味を尋ねると、彼は今一度無言のままグレンを睨みつけた。

「私は以前……シェリー君からカタリナがこの術式の糧となるべく危険な手術に臨んだことを聞いた。だが、当のお前はカタリナの死に耐えられず、病院から逃げてしまった。命すら差し出したカタリナの覚悟に対して、お前にはまるで覚悟ができていなかったんだ。……そんなお前に手術を任せることはできん。」

グレンは瞑目してその言葉を噛み締める。それは痛いほどに的を射ていた。

「ああ、確かにその通りだ。俺には医者として最低限の覚悟がなかった。結果、闇医者なんかに身を落とした。……だがな、闇医者をやってたおかげで学んだこともある。」

言うや否や、グレンは勢いよく己の腰に手をやる。

隠していたものの硬い感触を確かめ、それを引き抜いてルーファスの鼻先に突きつけた。

――ラインフォルト社製の導力銃が病室に差し込む夕日を鈍く反射していた。

一瞬で場の空気が凍りつく。

「……脅迫でもするつもりか。」

殺気を放つそれを見て、ルーファスも動揺を隠せなかった。

グレンはニヤリと口元を歪め、引鉄に指をかける。

――次の瞬間、グリップがクルリと反転した。銃口の向きとともに、立場が逆転した形になる。

「……患者に死のリスクを負わせる以上、医師である俺も相応のリスクを負う。もし手術が失敗したら、こいつで俺を殺せ。」

グレンの言葉には真に迫るものがあった。

それは、闇医者として裏社会で生きた彼ならではの『覚悟』だった。

――重苦しい静寂が訪れる。

誰もがルーファスの答えを待っていた。

彼は、眼鏡の奥の双眸を静かに閉じ……

そして、差し出された銃のグリップを握った。

「……いいだろう、グレン。お前の覚悟……本物のようだ。その術式がヒューゴ君の"命"を救うというなら……俺もそれに賭けよう。」

 

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