徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

闇医者グレン

闇医者グレン 最終話 グレン

1ヶ月後ーー エメリア病院の小児病棟の個室で、バイオリンを弾くヒューゴの姿があった。 彼の両手は同じ年代の子供と同様の、柔らかく暖かな肌色を取り戻していた。もう、翠色の妖しい輝きは微塵も残っていない。 しかし、結晶化していた指先の感覚はまだ鈍…

闇医者グレン 第13回 祈り

「……おい、どうした?」 たまらずルーファスは声をかけた。 「グレン先生……?」 シェリーもその様子を心配そうに見つめている。他の医師たちにも、何が起こったのか理解できない。 グレンは、脈打つ心臓を視界に捉えた瞬間―― カタリナの手術を思い出していた…

闇医者グレン 第12回 手術

ルーファスはすぐに、病院内にある会議室に3日後のヒューゴの手術に臨む医師たちを集めた。 名目は、より効果の高い術式への変更。 グレンは術式の発案者として紹介された。 医師たちは当初、それを冷ややかに受け入れた。下町で闇医者を営む男、グレン…… 腕…

闇医者グレン 第11回 覚悟

「……ヒューゴ君、考え直したほうがいい。」 すぐさま反論したのは、そばにいたルーファスだ。彼は、グレンを強く睨みつけた。 「『腕を失わずに治せる方法』とは…… カタリナに施した術式だな?あれが失敗だったことを誰より分かっているのはお前のはずだ。」…

闇医者グレン 第10回 希望

ヒューゴの手術が3日後に迫った日の夕方。 手術の期日が決まってから、彼の病室には毎日のように担当医のルーファスがやってきていた。来たる手術について、少年に説明するためだ。 「……ヒューゴ君、聞いているかね。」 ルーファスが神経質そうな声で尋ねる…

闇医者グレン 第9回 シェリー

「お前が……カタリナの妹だと!?」 驚愕するグレンにシェリーはコクリとうなずく。その眼は真っ直ぐにグレンを捉え、とても嘘を言っているようには見えない。 カタリナと歳の離れた妹、シェリル。 何度か会ったこともある。 カタリナの入院時にはよく見舞い…

闇医者グレン 第8回 苛立ち

グレンは下町の診療所に戻ってきていた。 中の様子は、出て行った時のままだ。 ……改めて見ると、散らかっている。 大金の入ったケースですら粗雑に置かれる始末。 築40年の古い建物とはいえ、まめに手入れしていれば少しはマシだったろう。 だが、彼にはそう…

闇医者グレン 第7回 衝突

手術の期日を告げたルーファスに、シェリーは慌てて反論する。 「ま、待ってください、ルーファス先生! いくらなんでも急すぎます!」 「《結晶病》の症状は待ってはくれない。 手術するなら早いほうがいい。」 屋上からの景色を眺めたままのグレンはそれに…

闇医者グレン 第6回 カタリナ

10年前、グレンはルーファスと共にレミフェリア公国内のある病院に勤めていた。 手術の才に恵まれた2人は、若手医師の中でも期待の星だった。 ある日2人は、接待で連れていかれた小劇場で、公国に伝わる伝統舞踊『バレエ』を見て、舞台の上の一人の踊り手に…

闇医者グレン 第5回 ルーファス

「――無理だ、その男には。」 病室前の静かな廊下に、男が現れていた。スラリとした細身の長身に白衣を羽織り、銀縁の眼鏡の奥から鋭い眼差しを向けている。 「先生……!」 看護師であるシェリーはよく知っていた。 彼はこのエメリア総合病院の医師の1人だ。 …

闇医者グレン 第4回 結晶病

それはよく観察すると、あまりにも生々しい“人間の手”を形作っているのがわかる。まるで精巧な美術品のようだった。 だが、どんなに老練した彫刻家といえど、ここまでの息づきを感じられる作品を作ることはできないだろう。 なぜなら、この美しい翠耀石(エス…

闇医者グレン 第3回 患者

いつの間にか雨は上がり、あたりは湿った空気に包まれていた。 「こんな物が出来ていたのか……」 エメリア総合病院――昨年建造された病棟は 真新しくも威厳を感じさせる立派な建物だった。 さすが、大公家が出資したというだけのことはある。 「グレン先生、こ…

闇医者グレン 第2回 依頼

「グレン先生はいらっしゃいますか?」 診療所に現れた看護師が尋ねる。 活舌のいい喋り方が凛とした雰囲気を感じさせた。 年齢は20代前半といった所だろうか。 まだ幼さが残る顔つきだが、かなりの美人だ。 「ああ、そりゃ俺のことだ。」 グレンはひとま…

闇医者グレン 第1回 闇医者

『美しき北の公国』レミフェリアは、 医療先進国として名を馳せている。 最新設備の整った病院には優秀な医師が集まり、 優良な医療機器メーカーがしのぎを削っている。 しかし、医療の発達したこの国にも影の部分はある。 例えばこの「下町」は導力化が後回…