徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

闇医者グレン 第7回 衝突

 手術の期日を告げたルーファスに、シェリーは慌てて反論する。

「ま、待ってください、ルーファス先生!

いくらなんでも急すぎます!」

「《結晶病》の症状は待ってはくれない。

手術するなら早いほうがいい。」

屋上からの景色を眺めたままのグレンはそれに何の反応も示さない。

ただ黙って聞いているだけだ。

「さっきヒューゴ君と相談して決めたことだ。看護師の君にとやかく言う権利はない。」

ルーファスに冷淡とも言える口調で制されて、シェリーは口をつぐむ。

彼の言う事は正しかった。

大人に比べて、14歳のヒューゴの体は小さい。

《結晶病》が心臓に達して命を奪うまでの時間もその分短い。

早急に手術を進めるのは医者として当然の判断だ。

――それでもシェリーには納得がいかなかった。

「先生は……ヒューゴ君が手を失うことについてなんとも思わないんですか!?」

「……命を助けるのが最優先だ。死んでしまえば夢を追うこともできまい。」

ルーファスは即答してみせる。

これはカタリナを失ったことで形成された、医師として譲れない信念だった。

シェリーはその言葉に落胆の色を隠せない。

「……私は必ず、あの子を助ける。」

ルーファスはシェリーの扉の向こうに見える、背を向けたままの巨躯の医師に言い放った。

「……断る手間が省けたぜ。せいぜい頑張りな、ルーファス先生よ。」

グレンはそれだけ言って後ろ向きに手を振ると、結局一度も視線を交わさないままその場を後にした。

「……情けない男だ。」

ルーファスはそう呟くと、シェリーに仕事に戻るよう促した。

病院に内緒で闇医者を呼んだ事に関しては今回だけは見逃すという。

彼女は肩を落とし、俯いたまま聞いていた。それは何かを考えているようにも見えた。

「もう、奴とは関わるな。……君にとっても辛いだけだろう。」

シェリーはその言葉に途端に顔を上げると、大きく首を振ってそれを否定した。

そして、ルーファスの眼を見つめて言う。

「ルーファス先生、ごめんなさい。私、グレン先生に言い損ねたことがあるんです。」

「……何?」

シェリーはルーファスの問いに答えることもせず、急いでその場を去っていった。

屋上に1人残されたルーファス。

吹き抜ける風が彼の白衣をなびかせると、彼は額に手を添えて大きなため息をついた。

「……やれやれだ。」

 

 

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