徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

賭博師ジャック 第4回 娘

結果は……少女の勝ち。

静まり返った酒場を、通りの喧騒が駆け抜けた。

「くく……くくく………」

ジャックは込み上げてくる笑いを抑え、

少女に問いかける。

「おい嬢ちゃん、一体どこで

 こんな腕を身につけたんだ?」

少女は言葉を返さない。

 

代わりに彼女はカードを手に取り、

それを見事な手つきでシャッフルし始めた。

自分の手元に5枚、ジャックの側にも5枚、

滑らせるようにして交互に配る。

「開いて。」と少女。

ジャックがカードをめくる。

ジャックにはJのフォアカード、

少女にはKのフォアカードが来ていた。

「これは……この配り方は………!」

カードを見たジャックが絶句する。

 

 

『ジャックはキングに勝てないんだぜ。』

彼の頭の中を

「キング」の言葉が駆け巡っていた。

「キング」。かつて共和国最強と謳われた

今は亡き伝説のギャンブラーの通り名だ。

少女の見せたカードさばきは

そのキングが得意としていた技――

ジャックをからかう時によくやる配り方だった。

「お前は一体……何者なんだ?」

 

息を呑み、ジャックは少女に問いかける。

ようやく少女は彼の言葉に答えた。

「あなたは私のことを

 よく知らないでしょうけど、

 私はあなたのことをよく知っている。」

「こんにちは。

 ヴィクトリー・ジャック。」

「私の名前は、ハル。

 あなたに殺されたキングの娘よ。」

「………! キングの娘だと!?」

 

キングの娘と

直接会ったことはなかった。

だが、ジャックには確かに覚えがあった。

親ばかのキングから、彼の娘の話を

耳にたこが出来るほど聞かされていたからだ。

「そうか……キングの娘が

 俺を殺しに来たか………」

場にピリピリとした空気が流れる。

「いいぜ、殺せよ。」

ジャックは無造作に言い放った。

 

酒場にいる誰もが予期せぬセリフだった。

「心臓はここだ、よく狙ってくれよ。」

そう言いながら、

自らの胸をトントンと突いて見せる。

少女――ハルが導力銃を静かに構える。

狙いはもちろん……ジャックの心臓だ。

 

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