徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

賭博師ジャックⅡ 第4回 レース

レナードとニケに従うままにやって来たのは導力車の草レース場だった。

ただし休業日なのか、車は一台も走っていない。

 

「すごい、これが導力車の……!」

草レース場とはいえ、れっきとした導力車のレース場。

幼い頃に父に連れて来てもらった記憶はおぼろげにあるが、訪れたのはそれ以来だ。

映画に続いて興奮を隠せない。

 

「ふふ、ハルちゃんってば本当に可愛いわ」

 

「ああ、かつてのキングの親バカぶりも納得だ」

ニケの言葉に頷くレナード。

「そうだハル君、せっかくだし実際にレースを観たくはないかい?」

 

「観れるの!?」

 

「ああ、そこにいる男が首を縦に振ればね」

おそらく最初から用意していたであろう筋書きと露骨な誘導――

ジャックは彼のこういう計算高いところが昔から苦手だった。

 

だがキングと同様、時にはそれ以上に、レナードからは色々なことを教わった。

恩があることは確かである。

導力車の運転技術もその一つ、様々な遊びやスポーツに精通した兄弟子だった。

 

そしてレナードが続ける。

「キングが亡くなった後、ずっと腐っていたお前がハル君との大勝負に勝ち、

息を吹き返したと噂で聞いて――俺は本当に嬉しかった。

なあ、ジャック。今日はどうかあの時のお前を――

ヴィクトリー・ジャックを見せて欲しい」

 

「……まあ、そういうことなら。

ブランクもあるので、相手が務まるかどうかは分かりませんが」

 

「フフ、決まりだな」

こうしてジャックはレナードと導力車レースを行うことになった。

 

 

 

――まずはマシンを選ぶ二人。

なんでもこの草レース場はレナードの馴染みらしく、今日は貸し切りで、

マシンもどれでも好きに使えるらしい。

 

「それじゃあ俺は――このヴェルヌ社の旧型で」

 

「フフ、ならば俺も同じ性能のものを選ぼう。これで条件はイーブンだ」

 

二人のレースが始まる――

スタートの合図を切るのは、ノリノリのハルだ。

「レディー……3・2・1・GO!」

 

スタートダッシュで機先を制したのはレナード。

ジャックはそれを追う形となる。

 

今はどうか分からないが、7年前の時点でジャックとレナードのドライビングテクニックはほぼ互角―― さらにマシンの性能が同格である以上、

直線で挽回するチャンスはほとんどないと言っていい。

そうなると、3つあるコーナー――

ここでいかに食い下がれるかが勝負の分かれ目だ。

 

第一コーナー――

ギリギリの所までアクセルを踏み、勝負を仕掛けるジャック。

だがレナードも同等以上のテクニックを見せ、難なくかわす。

 

第二コーナー――

さっきとは微妙に異なるカーブの形状に合わせ、

限界近くまでスピードを保って勝負を仕掛けるジャック。

だが前にいるレナードの絶妙なブロックに合い、追い抜くことは適わない。

 

第三コーナー――

最後の難関と言うべき、ヘアピンカーブが待っていた。

ここまでの攻勢にレナードが油断したのか分からない。

とにかく起こった、レナードのわずかな操作のロス――

ジャックはそれを見逃さず、ついに逆転に成功する。

 

そして最後の直線――

ジャックの視界にレースフラッグを振るニケの輪郭が浮かび上がる。

すると、ジャックは思わずペダルを緩めてしまう。

結果――勝負はレナードの勝利で終わった。

 

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