賭博師ジャックⅡ 第7回 影
「それじゃあハルちゃん、私の質問に答えてくれるわね?」
「うん、約束だから」
ハルが潔く首を縦に振る。
「ふふ、いい子ね。
こんなことを聞くのは無神経かもしれないけど……
7年前、キングから何か受け取ったものはある?」
7年前の父の記憶……直後に起きたことを思うとハルの心にはいつでも悲しみが蘇る。
だがそれはジャックと過ごす日々の中で少しずつ和らいでいる。
ニケの質問に従って記憶を辿るハル。
思えば……いつもかけている綺麗な宝石の嵌った東方風の首飾りがそれだ。
「この首飾り……これがそう。
7年前、パパが私のお見舞いに来てくれた時にかけてくれたの」
「そう、それだけ聞ければ十分よ」
ハルの昔語りを神妙な面持ちで聞くニケ。
「――さてと、そろそろデートの時間だし今日はこの辺で失礼させてもらおうかしら」
そう言ってニケはマスターにチップを渡し、颯爽と酒場を出て行くのだった。
なお周りにいたゴロツキたちは……
そんな一連のやり取りをただ静かに見届けることしかできなかった。
「それにしても…… ジャックったら遅いわね」
買い出しに出て、もう小一時間は過ぎている。どうせ寄り道でもしているのだろう。
それもいつものことと溜息をつき、仕事を再開するハル。
溜まっていたゴミを出すために裏口の扉を開ける。
そのまま外に出た瞬間――突然“影”に覆われた。
「よう! ジャック様のお帰りだぜ」
勢いよく店の扉を開けるジャック。
その音はもはや悲鳴というより絶叫だ。
案の定、寄り道をしてきたらしく必要以上の買い物袋を携えている。
「ありゃ、ハルはどこへ行ったんだ?」
そういえば、とマスター。
ゴミ出しに出てから、しばらく戻ってこない。
――ジャックに嫌な予感がよぎる。
急いで裏口に出ると、
そこには散乱したゴミ袋と目立つ位置に一枚のカードが置かれていた。
そして表にこう書かれてある――
『ハル君の身柄は預かった。取り返したくば指定の場所へ来い。――レナード』
「これは……!」
ジャックはカードを握り潰した。