徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

コニーと不思議な博物館 第2回 【コニー未知との遭遇】

「あれ……おかしいな」

 扉はうんともすんとも言いませんでした。むきになったコニーはでたらめに前後左右に力を込めます。すると、ようやく重い扉はズンッという音を立てながら開き出し、冷気を放ちながら地下へと続く階段が姿を現しました。

「この先にすごい珍しい物があるの! 行こう!」

 女の子は開いた扉の先、まるであの世に通じているかのように底が見えない暗闇の階段へとコニーの手を取って歩き出します。

 一方、コニーは咄嗟に立ち止まり女の子を引き留めました。

「ま、待ってよ。こんなどこに続いてるかも分からない所に行ったら流石に迷子になるよ、危険じゃない?」

 今まで博物館の探索が楽しかったコニーでも、流石に深い地下に潜る事は躊躇われました。すると女の子は怪訝な表情を浮かべます。

「もしかして……怖気付いちゃった? もっと勇気がある男の子だと思ってたのにな……」

 そう言って肩を落とす女の子の台詞に我慢が出来ず、コニーはつい反論してしまいました。

「まさか! 俺は怖くないけど、君が内心怖がってるんじゃないかと思って言っただけだし!」

 女の子は「なんだぁそうだよね、君優しいんだね!」そう言って晴れやかに笑い、繋いだままのコニーの手を引いて共に階段を下りて行きました。

「もうすぐで着くからね」

 2人はそろりそろりと不確かな足場を確かめながら、真っ暗な地下へと続く階段をひたすら降りて行きます。先行する女の子のコニーの手を握る力が、心なしか強くなっていきました。

 そうして2人が時間の感覚が無くなるほど長い階段を下りていると、不意に女の子が立ち止まります。

「着いたよ」

 コニーは女の子の横に並んで立ち、先を見渡しました。そこに広がる空間は、女の子と出会ったときに見ていた絵と正しく同じ光景。細長い箱が等間隔に並べられており、1つだけ箱が開いていましたどこからか吹き込むひんやりとした空気が、場に緊張感をもたらしています。コニーは扉を開ける前に感じた危機感などすっかり忘れて、今はただ絵にあった光景が今も実在していることに感動しました。

「すごい! 絵にあった場所だ!」

 コニーの喜びの声は、地下空間に反響してこだまします。

「ここはねぇ、地下墓所って言うんだよ。

 こんな地下深くにいたら声は誰にも届かないし、誰も助けに来ないだろうねぇ」

 突如、不穏な言葉を受けてコニーは隣にいる女の子の方を見ました。

 すると、そこにあったはずの女の子の可憐な顔はみるみる内に歪んで、赤い目だけが怪しく光る黒い影へと変わります。

繋いでいた女の子の柔らかい手も黒い影となり、とても女の子とは思えない握力でコニーの手を握りしめました。

「うわあああ!」

 思わずコニーは悲鳴を上げます。変わり果てた女の子の姿と自分の置かれた状況に理解が追い付かず、驚きの感情は少し間を置いてから恐怖へと変わりました。

 コニーは本来の黒い影へと姿を変えた女の子の手を振りほどこうと必死に抵抗しますが、びくともしません。

「そんな大声出さなくても君のおかげで、もう皆起きてるよ」

 黒い影は女の子の面影を残した声で、不敵に笑いました。

 すると、等間隔に並べられていた箱――石造りの棺の蓋がゴトゴトと音を立てて動き出し、開いた隙間からは黒い影が蠢き這い出します。コニーが恐怖で動けずにいる内に、全ての棺から黒い影が完全に姿を現していました。

 コニーの真っ白になった頭の中に、ある言葉がよぎります。

『人が沢山いるから、絶対に手を離してはぐれちゃ駄目よ。博物館で迷子になったら、迷子になった子供も、家族も、お化けに食べられちゃうんだからね?』

 それは、博物館に入る直前の母親の言葉でした。

「まさか本当だったなんて……」

 恐怖で足を震わせながら深く後悔するコニー。起き上がった黒い影たちはそんな彼の元にじりじりと距離を詰め、しまいには取り囲んでしまいます。

「きちんと俺が言う事を聞いていれば良かったんだ…… ごめんね母さん……」

 コニーはひたすら後悔に苛まれながら、大きく口を開ける黒い影たちをただただ見つめていました。

 

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