人形の騎士 【第4巻 義を見てせざるは】
森の奥から、影のように現れた蒼騎士を見て
女の子を襲っていた男たちは目を丸くしました。
『娘を置いて、立ち去るがいい』
蒼騎士は、兜の奥から警告を発しました。
人形師の奥義のひとつとして
老師匠から叩き込まれた腹話術です。
『なんだァ・・・テメエは?』
『怪我しねえうちに、さっさと消えろ!』
『愚かな・・・』
蒼騎士は一足で間合いを詰めました。
正拳で、女の子を捕まえていた男を昏倒させ
ふり向きざまに2人の男を蹴り飛ばします。
『ケガはないかな、お嬢さん?』
『は、はい。平気ですわ』
『結構。離れているがよかろう』
蒼騎士は、ようやく剣を抜き放ちました。
黒装束をまとった、首領格の男が近づいてきます。
『流れ者か。やるようだな・・・』
そういう黒装束の構えも本格的で
正式な剣術の心得があることを
うかがわせました。
『だが、お遊びはここまでだ。
小金をくれてやるから、娘を渡せ』
『義を見てせざるは勇なきなり。
それは出来ぬ相談だな』
『ならば・・・死ねいッ!!』
鋭い気合いと共に、黒装束が襲ってきました。