クロスベルタイムズ 1204年後期 10号
【特集】独立国体制から一ヶ月を振り返る
◆節目の一ヶ月◆
ディーター大統領の独立宣言より早一ヶ月。独立当初の混乱も徐々に緩和されてきたようだ。節目の時にクロスベルの新体制を振り返ってみたい。
◆波乱含みの独立◆
独立宣言直後にそれを完全否定した帝国・共和国は最後通牒より24時間後、クロスベル領土への進軍を開始した。帝国軍の重戦車師団はベルガード門を突破、共和国軍の精鋭空挺機甲師団はタングラム門を破壊しクロスベル市へと侵攻した。
しかし独立国政府が保有する最新鋭の人形兵器ーー通称「神機」がこれを阻止。クロスベル市街を狙ったガレリア要塞の非道な列車砲もまた、神機によって完全に無力化されたのだった。
◆独立国の安全保障をになう新兵器◆
国防軍はクロスベルの自治権および中立性を守るためとし、強力な導力波を用いた防衛兵器を運用。クロスベル市の周囲に特殊な障壁を展開した。これによりいかなる外的攻撃からもクロスベル市民を守れるという。
しかし国防軍の通行許可は時間が掛かる、郊外の集落は見殺しなのかなど辛らつな意見もあり、当通信社からも質問を試みたが、軍及び独立国政府からの正式な回答は得られていない。
◆大陸諸国連合、成立へのロードマップ◆
先日、独立国政府は改めて大陸諸国連合成立へのロードマップを発表。現時点で加盟を表明している国と地域は4カ国であることを明かし、数ヶ月以内に初期加盟国との調印を行ないたいとしている。
戦争行為の完全禁止、自由な経済活動の保障を唱えるこの枠組みは、現時点ではほぼ順調に滑り出したと言えそうだ。
◆続報、各国の反応は◆
アルテリア法国はクロスベル独立後、初めて談話を発表。西ゼムリアにおける事態を注意深く見守っていくとした。
リベール王国およびレミフェリア公国もクロスベルの民意を尊重するとし、「事実上クロスベル独立国を承認した」(独立国広報官) 事態は安定に向かっているとみて良いようだ。
【経済】カルバード共和国、経済恐慌とまらず
カルバード共和国政府は相次いで金融政策を発表。しかし貸し倒れが止まらず、経済恐慌は悪化の一途を辿っているようだ。すでに同国に籍を置く国際企業へも影響が広がっている。また昨日未明にはバス爆破テロが発生、多数の重傷者を出したという。
【国際】エレボニア帝国内戦、全面抗争の様相
先日、領袖である《鉄血宰相》ギリアス・オズボーン氏が凶弾に倒れた帝国革新派は、改めて徹底抗戦を宣言。貴族派との内戦は泥沼化の様相を呈してきた。
帝都では難を逃れようとする人々が列をなしているという。続報が入り次第おってお伝えしたい。
【社会】国防軍、買いだめ規制を検討
食料品や日用品の買いだめ行為が続いたことについて、クロスベル国防軍は市内には十分な物資が流通している、不必要な行為をしないようにと呼びかけた。独立国政府は5年分の食糧および日用品を備蓄しており、すでに大手食料品店で流通を始めているという。
国防軍は混乱が続くようであれば買いだめ規制を検討するとしている。
※レジャー、生活の紙面はお休みしました。
クロスベルタイムズ 1204年後期 号外
【速報】ディーター市長、各国の資産凍結を宣言
◆突然の緊急会見◆
ディーター市長は本日オルキスタワーにて緊急会見を開き、クロスベル国際銀行(IBC)が預かる各国の全資産の凍結を宣言、クロスベル独立を承認しない限り資産凍結は解除しないとした。
緊急会見のため確認が取れていないが、IBC総裁を兼任する市長が事実上世界各国の内政への強制介入を宣言したと取れる内容だ。
大陸随一の資産額を誇り、実質的に大陸諸国の国外 資産の大部分を保有するIBCの突然の行動発表直後から各国の銘柄は乱高下し、共和国市場はパニック状態になったとの情報もある。「現時点で既に国際経済には甚大な影響、先が見えない」(エコノミスト)
「本当に(資産)凍結を行うのか、今一度確認させてほしい」(外交筋)
【緊急速報】帝国・共和国両政府、軍事介入を通牒
たった今入った情報によると、帝国・共和国両政府が公式会見を行なったとのこと。
IBC及びクロスベル自治州に対し、即座に資産凍結を解除するよう要求、果たされない場合は「もはや実力行使も辞さない」(共和国政府報道官)とした。
帝国政府はすでに軍を展開中との情報もあり、この会見が最後通牒ではないかと思われる。
本ニュースに関しては正確な情報が入り次第、おって速報でお伝えする。(特派員)
クロスベルタイムズ 1204年後期 9号
【特報】クロスベル自治州、国家独立を宣言!!
(はじめに)
国家独立に関する住民投票の結果について、選挙管理委は投票率が90%を超え、7割以上の得票を持って「国家としての独立」が採択されたと発表した。高い投票率の背景には、先のクロスベル市襲撃事件への市民への関心があるようだ。一連の事件が帝国あるいは共和国の暴力ではないかとの声も根強く、人々が自治州の新しい姿を求めた結果なのかもしれない。
本誌の報道について
当初「クロスベル市民の意思の確認」とされていた今回の投票だが、開票後は異例の展開へと進んだ。議会でも慎重意見が相次いだ中、市長が押し切った形の独立宣言。周辺諸国への影響はこれ以上ないと言ってよいほど大きいものだが、本誌はクロスベルに籍を置く通信社として誠実な報道を行っていくことをここに明記したい。(編集長)
◆ディーター市長、国家独立を宣言!◆
ディーター・クロイス市長は昨日の会見で、クロスベル自治州の「国家独立宣言」を発表した。市長はこれを正式な国際宣言だとし、合わせて「クロスベル独立国」の名称を提唱した。
続いて市長は独立国としての改革に言及。国家憲法の制定、宗主国であった帝国・共和国からの自治権の破棄および税収10%譲渡の完全撤廃、さらに強力な国防・治安維持能力をもつ組織として、警察と警備隊を統括する「国防軍」の設立などを宣言した。
自治州政府(独立国政府に改称予定)は合わせて会見を開き、これらの改革を一ヶ月以内に施行するとしている。
今回の独立宣言に関し、政界関係筋でも「異例の急展開だ」と混乱が続いている。しかしディーター市長は慎重姿勢だったマクダエル議長を論破したとされ、当面混乱は収まりそうにない。
◆関係国の反応は……?◆
現在宗主国の1つである帝国政府は即日会見を開き、提言を断固却下すると発表。共和国政府も「自治州は歴史的に共和国領にあたる」との談話を発表、事実上宣言は無効だとした。
またリベール王国のアリシアⅡ世は、民意は尊重されるべきだが現時点での独立宣言は性急との見解を発表。レミフェリア公国も事実確認を要請中とし、近々同様の発表を行う模様だ。アルテリア法国は公式上の発表予定はないとしているが、「国家は1日で成るものではない」(広報関係者)と戸惑いが広がっている。
◆クロスベル市では◆
突然の発表に市内でも混乱が広がったが、現在では歓迎する声が多く聞かれる。一方で「意思の確認をするだけと聞いたから賛成に投じた」など困惑の声も。
取材を通して一番強く感じたのは、今はどこも混乱しているという事だった。クロスベルが本当に独立への道を歩みだしたとすれば、困難はむしろこれからなのかもしれない。