人形の騎士 【第15巻 ささやかな決意】
『殿下は、蒼騎士の正体に気付いておられた。
それなのに、あえて知らぬフリをされたのじゃ。
お前は本当に、その理由が判らんのか?』
『そ、それは・・・』
不意に、脳裏にひらめくものがありました。
"ペドロ様は、黙っててください"
そう言った時の、どこか怒ったような表情。
"気付かないふりをしていました"
そう打ち明けた時の、さみしそうな笑顔。
胸の奥で、熱いものが込み上げました。
ペドロは顔を上げて、カプリの鋭い視線を
真正面から受け止めました。
『師匠、お願いします!
蒼騎士の修理、手伝ってください!』
『お前が戦った仮面の人形師は
その道では、悪魔のように恐れられる男じゃ。
半人前ごときに、太刀打ちはできんぞ?』
『それでも、やります。
僕を信じてくれた人のために!』
すると、得たりとばかりに
カプリは莞爾(かんじ)と笑いました。
それは、戴冠式の前日のこと。
おりしも王宮は、王女失踪の報せに
上へ下への大騒ぎになっていました。