賭博師ジャックⅡ 第2回 愛のソレイユ
導力カメラで撮影し、編集した映像を巨大なスクリーンに投影して音声と共に鑑賞する《映画》――
それはカルバード共和国が他国に先駆けた文化で、
ここ数年の内に庶民でも楽しめる娯楽として徐々に広がりを見せている。
普段はハルの誘いに反応の鈍いジャックも映画と聞いて興味をひかれ、快く足が動いた。
「で、2つあるがどちらを観るんだ?
俺的にはこっちの『ダークガンマン』が――」
「それじゃあジャック、『愛のソレイユ』のチケットを2枚よろしく♪」
満面の笑みで返すハル。
……ジャックに選択権はなかった。キングのことだけが理由ではない、相性的な問題なのか、ジャックはなぜか、ハルにはてんで頭が上がらない。
『愛のソレイユ』――巷(ちまた)で流行っている小説を映画化したもので“ラブロマンス”とかいうジャンルらしい。
微妙に気は進まないが観念して建物の中に入るジャック。
そこは導力エアコン(冷風で室内の温度を下げる、近年発明された導力製品)が効いた快適な空間だった。
「ねえねえ――すごいわね、ジャック!」
目に映るものも映らないものも、何から何まで新しい《映画館》。
ハルのテンションはすでに最高潮だ。
ハルにせがまれ、施設内の販売所でドリンクとポップコーンを購入するジャック。
そうこうしている間に上映時間となり、二人はチケットに書かれた番号の席に着く。
スクリーンに映し出される美男美女。
二人の熱烈で劇的な恋愛模様が時に激しく、時に切ない展開で描かれていく。
そして、クライマックス――
数多の障害を乗り越え、結ばれる二人。
最高に盛り上がるキスシーンが大画面に映し出される。
あまりにも情熱的なそのシーンに画面を直視できないハル。
ふとジャックのことが気になり視線をやると……
目に飛び込んで来たのは、気持ちよさそうに眠りこけるジャックの姿だった。