徒然雑記帳

ゲームプレイを中心に日々のことを綴っていくだけのブログ。他、ゲーム内資料保管庫としてほいほい投げます。極稀に考察とかする…かな?お気軽に読んでいってください。

コニーと不思議な博物館

閃の軌跡Ⅲより。作者は一体何者なんでしょうね?明らかに「裏」を知っている人間の体験談の様にも思えますが……。

 

第1回 【コニー博物館へ行く】

 

 帝国に住む男の子コニーは、両親と一緒に帝国博物館を訪れていました。館内は帝国の波乱に満ちた歴史を物語るかのように物々しく、荘厳な雰囲気を醸し出しています。ですが、まだ子供のコニーはそんな事を感じることも無く、ただの古い物が仰々しく置いてあるだけだと思っていました。

「人が沢山いるから、絶対に手を離してはぐれちゃ駄目よ。博物館で迷子になったら、迷子になった子供も、家族も、お化けに食べられちゃうんだからね?」

 お母さんは、日頃からお調子者で全く両親の言うことを聞かないコニーを心配して言い聞かせます。

「はいはい、そーですね」

 コニーはお決まりの小言に辟易しており、適当に答えました。

 それから数分経った頃、やはり退屈してしまったコニーは、せめて自由に動き回りたいと考え、両親が展示物に夢中になっている時にさりげなく母親の手を離し、1人で館内の探検に出ました。

 

                  ◇

  

 ゆっくりと歩く人々の波をかき分けて、ようやく開けた場所に出たコニー。そこには1枚の壁画が展示されていました。

 壁画に描かれていたのは巨大な翼をもつ竜と、筋骨隆々とした獣の姿。コニーはその絵の獣たちの力強さに心を打たれましたが、同時にこんなおとぎ話みたいな生き物が居る訳ないと冷めた感想を抱きました。

 その壁画の隣には、古びた1枚の絵が展示されていました。その絵には複数の細い箱が並んでおり、殺伐とした色彩で描かれています。

 さらに、コニーがよく見ると、絵の中で明らかに違和感のある部分を発見しました。それはたくさんある箱の内1個だけ蓋が開いており、箱の中身の部分だけ絵具が剥がれ落ちているのです。コニーはこの絵が何を現しているのか分かりませんでしたが、不思議な魅力を感じました。

 こうしてコニーが絵の前で足を止めていると、不意に背後から声がかけられます。

「この絵、好きなの?」

 コニーが振り返ると、そこには穏やかな微笑みを浮かべた、コニーより年上そうな女の子が立っていました。女の子は返事を待たずに続けます。

「博物館って静かだし、古い物しか置いてなくて退屈じゃない?

 だけど私、この絵は気になるんだよね」

 コニーは全く同じ感想を持っている彼女に好感を抱きました。

「僕もそう思う! この、箱が開いてる所なんて、箱の中から色が抜け出しちゃったみたいで面白いよね」

 その言葉を受けた女の子は顔を明るくして、コニーの手を取ります。

「私達気が合うね! 他にも面白いもの見つけたから、良ければ一緒に見て回らない?」

 コニーは“気が合う”と言われた事に気をよくし、女の子の申し出を快諾しました。

 

                  ◇

 

 コニーは女の子に手を引かれて、博物館を観て回る事にしました。女の子がコニーに見せる展示物はどれも面白く、両親と一緒に観て退屈だった事が噓のように熱中してしまいます。

「私今まで病院に籠りがちだったから、君とこうして博物館を観て回れて嬉しいな」

 女の子は少し照れくさそうに言いました。

「俺も……家族と居るよりは今の方がマシかな」

 あまりにも恥ずかしくなったコニーは、少し本音を濁らせて返答します。すると女の子は「家族はどうしたの?」と心配そうに尋ねてきました。

「入口の方の展示室に置いて来たよ。一緒に観てもつまらなかったから」

そんなコニーの言い淀んだ返答を受けて女の子は「へぇ……」とだけ淡白に返しました。

 こうして2人が展示物を一通り歩き切った後、

「それじゃあ最後に、私のとっておきをみせてあげるよ!」

 女の子は張り切ってそう言います。コニーもすっかり博物館に夢中になっていたので、手を引く女の子の後ろを大人しくついて行きました。

 次第に人の波がまばらになり、ついには誰もいない所に辿り着いた2人。そこには歴史を感じさせる質素な扉があり、どこか妖しい雰囲気を孕みながら、まるでコニーを静かに見つめているかのように佇んでいます。

「この扉の奥なんだけど、重たくて1人じゃ開けられないの。でも今日は力持ちの男の子がいるから問題ないけどね!」

 女の子は無邪気にそう言って、コニーに扉の前を譲りました。コニーは「開けて開けて」と催促する女の子に言われるまま、扉のドアノブに手をかけ、力を込めます。

 

第2回 【コニー未知との遭遇

 

「あれ……おかしいな」

 扉はうんともすんとも言いませんでした。むきになったコニーはでたらめに前後左右に力を込めます。すると、ようやく重い扉はズンッという音を立てながら開き出し、冷気を放ちながら地下へと続く階段が姿を現しました。

「この先にすごい珍しい物があるの! 行こう!」

 女の子は開いた扉の先、まるであの世に通じているかのように底が見えない暗闇の階段へとコニーの手を取って歩き出します。

 一方、コニーは咄嗟に立ち止まり女の子を引き留めました。

「ま、待ってよ。こんなどこに続いてるかも分からない所に行ったら流石に迷子になるよ、危険じゃない?」

 今まで博物館の探索が楽しかったコニーでも、流石に深い地下に潜る事は躊躇われました。すると女の子は怪訝な表情を浮かべます。

「もしかして……怖気付いちゃった? もっと勇気がある男の子だと思ってたのにな……」

 そう言って肩を落とす女の子の台詞に我慢が出来ず、コニーはつい反論してしまいました。

「まさか! 俺は怖くないけど、君が内心怖がってるんじゃないかと思って言っただけだし!」

 女の子は「なんだぁそうだよね、君優しいんだね!」そう言って晴れやかに笑い、繋いだままのコニーの手を引いて共に階段を下りて行きました。

「もうすぐで着くからね」

 2人はそろりそろりと不確かな足場を確かめながら、真っ暗な地下へと続く階段をひたすら降りて行きます。先行する女の子のコニーの手を握る力が、心なしか強くなっていきました。

 そうして2人が時間の感覚が無くなるほど長い階段を下りていると、不意に女の子が立ち止まります。

「着いたよ」

 コニーは女の子の横に並んで立ち、先を見渡しました。そこに広がる空間は、女の子と出会ったときに見ていた絵と正しく同じ光景。細長い箱が等間隔に並べられており、1つだけ箱が開いていましたどこからか吹き込むひんやりとした空気が、場に緊張感をもたらしています。コニーは扉を開ける前に感じた危機感などすっかり忘れて、今はただ絵にあった光景が今も実在していることに感動しました。

「すごい! 絵にあった場所だ!」

 コニーの喜びの声は、地下空間に反響してこだまします。

「ここはねぇ、地下墓所って言うんだよ。

 こんな地下深くにいたら声は誰にも届かないし、誰も助けに来ないだろうねぇ」

 突如、不穏な言葉を受けてコニーは隣にいる女の子の方を見ました。

 すると、そこにあったはずの女の子の可憐な顔はみるみる内に歪んで、赤い目だけが怪しく光る黒い影へと変わります。

繋いでいた女の子の柔らかい手も黒い影となり、とても女の子とは思えない握力でコニーの手を握りしめました。

「うわあああ!」

 思わずコニーは悲鳴を上げます。変わり果てた女の子の姿と自分の置かれた状況に理解が追い付かず、驚きの感情は少し間を置いてから恐怖へと変わりました。

 コニーは本来の黒い影へと姿を変えた女の子の手を振りほどこうと必死に抵抗しますが、びくともしません。

「そんな大声出さなくても君のおかげで、もう皆起きてるよ」

 黒い影は女の子の面影を残した声で、不敵に笑いました。

 すると、等間隔に並べられていた箱――石造りの棺の蓋がゴトゴトと音を立てて動き出し、開いた隙間からは黒い影が蠢き這い出します。コニーが恐怖で動けずにいる内に、全ての棺から黒い影が完全に姿を現していました。

 コニーの真っ白になった頭の中に、ある言葉がよぎります。

『人が沢山いるから、絶対に手を離してはぐれちゃ駄目よ。博物館で迷子になったら、迷子になった子供も、家族も、お化けに食べられちゃうんだからね?』

 それは、博物館に入る直前の母親の言葉でした。

「まさか本当だったなんて……」

 恐怖で足を震わせながら深く後悔するコニー。起き上がった黒い影たちはそんな彼の元にじりじりと距離を詰め、しまいには取り囲んでしまいます。

「きちんと俺が言う事を聞いていれば良かったんだ…… ごめんね母さん……」

 コニーはひたすら後悔に苛まれながら、大きく口を開ける黒い影たちをただただ見つめていました。

 

第3回 【コニー思い知る】

 

 すると、突如地下墓所の奥の方からゴウッという音が聞こえてきました。同時に、遠くから砂埃が大きく膨らみながら近づいて来るのが分かります。砂埃がコニーの元にやって来た頃には、高い天井に届く程の高さになっていました。

 コニーは咄嗟に空いているもう片方の手で顔を守ります。小さな砂粒がコニーの体に当たって弾け、腕や足がチクチクと痛み出すのを静かに我慢しました。

 ほどなくして暴風が止み、コニーは薄目を開けます。すると土煙が立ち込め視界が悪い中――なんと、高い天井でも収まりきらない巨大なシルエットがコニー達の前に佇んでいました。

「まさか……!?」

 驚愕のあまり、コニーの手を掴んでいた力を緩める黒い影。

コニーはすかさず手を放し、コニーの周囲を取り囲んでいる黒い影達の輪の隙間に体を滑らせます。そこで、重々しく厳格な声がコニーの動きを制止しました。

「そこを動くな少年」

 思わず背筋が伸びてしまうような気持で、コニーは言われた通り動きを止めます。

「悪霊に操られている霊達よ、今空の女神の元に送り届けてやろう」

 厳格な声がそう告げると、声のした方向から無数の光の粒がコニー達に吹き付けて来ました。光の粒に触れた黒い影は苦しそうな絶叫を上げて、光に照らされ続ける程影が薄くなったと思うと次第に消えていきます。

「あああああああぁ!」

 聞き覚えのある声が絶叫をあげ、コニーは思わずそちらの方を見ました。すると黒い影は光に包まれ、絶叫が消えたと同時に女の子が姿を現します。かける言葉を見つける事が出来ずにコニーが女の子を見つめていると、目が合いました。

「……騙すような事して、ごめんね。

でも、君と一緒に博物館を回れて、私本当に楽しかった。

君と友達になれそうで嬉しかった…… 

それだけは嘘じゃないの」

 女の子は涙を流しながら、真っ直ぐコニーを見据えて語りました。吹き付ける光の粒はあっという間に数を増し、広い地下墓所の壁にぶつかると舞い上がって、コニー達の頭上に降り注ぎます。圧倒的な光景の中、女の子の輪郭は次第に透けていきました。

 コニーは咄嗟に女の子に駆け寄り、繋ぎとめるように手を取ります。

「分かった、大丈夫、俺信じるよ!

俺なんて、君が居たから初めて博物館を楽しめたんだ。

君と出会えて嬉しかったのは俺の方だよ!

だから……もう俺たちは友達!

友達が泣いたままの方が俺は許せない!」

 コニーは消えゆく女の子に言い残さないよう、まくし立てて言いました。それを聞いた女の子は少し驚いた後、初めて会った時のように、穏やかに微笑みます。

「ふふっ……ありがとう。

 そうだよね、ようやく友達になれたのに泣いたままお別れなんて、寂しいもんね」

コニーが握る女の子の手の感触は、もう無くなっていました。

「大丈夫、俺達気が合うから、きっとまた会えるよ」

陽炎のように薄らいだ女の子は最後に満面の笑みで頷き、地下墓所を照らす光と一体になりました。圧倒的な眩しさと涙でコニーの視界が霞みます。

 

                 ◇

 

 暫くして目を開けると、光の粒の残滓が自然の中に溶け込んで消えている事が分かりました。

「どうやら、良い友を得たようだな」

厳格な声が聞こえて、呆然としていたコニーを我に返らせました。声の主が訪れたのと同時に立ち込めていた土煙は既に晴れ、その巨大なシルエットの正体があらわになります。

「りゅ……竜!?」

 思わず声に出してしまうコニー。

 そこに悠然と佇んでいたのは、巨大な翼をもち、対峙する事自体が恐れ多いような神聖さを持った竜でした。竜は空気の振動が肌で感じられる程低い声で、コニーに語りかけます。

「しかし、あのままでは悪霊に飲み込まれていたぞ?

 悪霊に惑わされるのは家族との約束を破った者だけ。

 少年よ、心当たりがあるのではないか?」

コニーは竜に出会えた興奮も冷める程にひやりとしました。

「そう……母さんにはぐれちゃ駄目って言われたのに、俺が勝手に抜けだした……」

 竜は静かにコニーの言葉を聞き届けます。

「それは決して褒められる事ではないと、分かっているな?」

コニーは静かにうなずきます。

「この博物館は、ある噂が囁かれている。

 子供が家族との約束を破ったら、子供も家族もお化けに食べられる、とな。

 現に少年は襲われていた訳だが……家族はどうなっただろうな!?」

「そ……そんな! まさか父さんと母さんも!?

 俺の時みたいに助けられないの……!?」

 コニーは竜に縋るようにして尋ねました。しかし、竜は静かに目を伏せ、頭を横に振ります。

「少年の両親も今の少年のように、心から心配していたはずだぞ?

 それを考えもせずにこのような自体を招いたのは少年自身。

 一度犯した過ちは、取り消す事は出来ない」

 その言葉を聞いて、コニーは人生で初めて心の底から反省をしました。いつもどこかで口煩い両親へ反発しながら、上辺だけ取り繕っていた自分が馬鹿らしく思えて来ます。コニーは静かに涙を流しながら、膝を付きました。

 竜はそんなコニーを見下ろし、短く息を吐きながらこう言います。

「……だが、これから未来の事は少年の努力次第で変えていける。

 同じ過ちを繰り返せば……わかっているな?」

 コニーは涙を拭いながら大きく頷きました。竜はその様子を確認すると、コニーにそっと頭を近づけます。そして竜の瞳いっぱいに情けない顔をしたコニーを映し、コニーも竜の瞳に映る自分を見つめ返しました。

 すると突然コニーの視界は竜の瞳に吸い込まれるような錯覚を覚えて、思わずよろめきます。

「友に胸を張って会えるような選択をするのだぞ」

 最後に、そのような優しい竜の声が聞こえた気がしました。

 

                  ◇

 

 コニーがはっとして態勢を整えようとすると、足が何かに力強く抑えられています。

「危ないから立たないでよ?」

 そこにはコニーを心配そうに見つめる母親と、静かにコニーを背負う父親の背中がありました。

「無事だったの!? ……黒い影のお化けは!?」

「何言ってるの。怖い夢でも見たんじゃない?

 博物館を一緒に観て回って疲れたのか、コニーが寝ちゃったからお父さんが背負ってくれてるのよ」

 突然の出来事にコニーは呆気にとられましたが、すぐに安堵が込み上げ自然と涙が溢れます。両親はそんなコニーを心配して慌てますが、コニーは自分で歩くと言って父親の背中を離れました。

「突然走り出したりしないでね? コニーはさっきまで寝てたんだから転んじゃうかもしれないわよ」

 いつものように心配する母親の方を向いて、コニーは笑顔で答えました。

「うん、分かってる。もう心配かけないから大丈夫だよ」

 

                  ◇

 

 後日コニーは博物館を訪れ、あの地下へと通じる扉を探しましたが、見つける事が出来ませんでした。心のどこかでそうだろうなと予感していたコニーは、地下墓所の絵の元へ向かいます。絵には、全ての蓋が閉じている棺。そして所々に植物が生え、温かい日の光を受けているような絵に変化していました。

「前よりいい絵になったな」

 コニーはあの日の不思議な思い出を胸に、誰かを心配させたり迷惑をかけるような事はしなくなりました。コニーのあまりの成長ぶりに両親は驚きましたが、温かく見守ってくれます。

「いつでも再会出来る様に、恥ずかしい事はできないもんな」

 コニーは竜と交わした言葉を忘れず、立派な大人へと成長していくのでした。